【故事成語】望梅止渴( wàng méi zhǐ kě )

目次
望梅止渴( wàng méi zhǐ kě ):あらすじ


喉が渇いた兵士たちに曹操が「この先に梅の林がある」と伝えたことで、なんとかこの苦境を脱した話。
望梅止渴( wàng méi zhǐ kě ):故事
魏の武帝(曹操)は行軍の途中、水源ヘと通じる道が見つけられず、兵士たちは喉が渇いていました。
すると曹操は兵士たちにこう伝えました。
「この先には大きな梅林があって、甘酸っぱい梅の実がたくさんなっている、
これで渇きを癒やせるぞ。」
これを聞いた兵士たちは、口の中につばがあふれてきました。
これにより曹操は部隊を先へ進めると、水源を見つけることができました。
望梅止渴( wàng méi zhǐ kě ):意味
「望梅止渴」は、「空想により自らを慰める」という意味になり、他の言い方としては「说梅止渴」( shuō méi zhǐ kě )や「望梅消渴」( wàng méi xiāo kě )があります。
出典《世説新語・假譎》
《世说新语·假谲》:“魏武行役失汲道,军皆渴,乃令曰:‘前有大梅林,饶子,甘酸可以解渴。’士卒闻之,口皆出水,乘此得及前源。”

《世说新语》(世説新語:せせつしんご)とは、南朝宋(南北朝時代の南朝の王朝、劉宋とも)の皇族であり文学者・官僚でもあった劉義慶(403~444年2月26日)によって著された小説で、別名『世説』ともいいます。
『世説新語』は、後漢後期~魏晋の著名人の逸話について書かれたもので、もともとは8巻あったとされていますが、現存するのは3巻のみになります。
前漢時代に劉向が『世説』という書を著していたので(原本は逸失)、宋代になって劉義慶の作を『世説新語』というようになったとされています。
この『世説新語』は全36篇からなり、各篇には複数の物語が収録されていて、『世説新語』全体では1130話にのぼる逸話が収められているとされています。
登場人物はすべて歴史上の人物ですが、中には伝聞も含まれており、すべてが事実に基づくものではありません。
また、話の長さもまちまちで、数行で終わるものもあれば、中には一文で終わってしまうようなものまであります。
さて、今回の「望梅止渴」の故事成語のもとになった故事は、この『世説新語』の第27篇「假谲」( jiǎ jué )に登場します。
「假谲」とは「偽ること、欺くこと」という意味で、この篇に収録されている話はすべて「目的達成のために嘘をついたり、ごまかしたりする、でまかせを言う」ものになりますが、悪意のあるものからそうでないものまであります。
『世説新語』の「假譎」の2つめに載っているのが今回の「望梅止渴」の故事になりますが、たったの二文しかないので、あっという間です。
日本語の書き下し文や現代語訳についてはこちらの「IKAEBITAKOSUIKA」のサイトを読んでみてくださいね。
ちょっと深掘り
「望梅止渴」は「空想により自らを慰める」という意味になり、他の言い方としては「说梅止渴」( shuō méi zhǐ kě )や「望梅消渴」( wàng méi xiāo kě )があります。
辞書を引いて「空想により自らを慰める」なんて出てきても、なんかいまいち意味が分かりそうでちょっと分かりにくい感じになっていますが、例えば、猫を飼いたいけどいろいろな事情によって飼えないという時に、YouTube動画で猫を実際に飼っている人の動画を観たり、野良猫を撮影している人の動画を観たりしてその欲求を満たすのをイメージすれば理解しやすいかもしれません。
使い方としては、別に頭の中で想像しなくても、実際の行動によって叶えられない欲求を満たすことにも用いられるようです。
さて、「梅」という言葉を聞くと舌にじゅわ~っとつばがあふれ出てきます。なんかかなり不思議です。
そんな梅ですが、この際なのでWikipediaなどでちょっと詳しく調べて見たのでまとめてみました。
まず中国語の「梅」という字についてですが、これはもともとクスノキ科タイワンイヌグス属の一種である「楠木」( nán mù )という樹木のこと指していました。
その後、「酸果」(酸っぱい果実)を意味する「楳」( méi )の借用字となりましたが、じょじょに「楠木」という意味が薄れていき、今の「梅」を指すようになりました。
ちなみに、現代中国語では「楳」と「槑」( méi )は「梅」の異体字とされています。
梅は中国の南方が原産であり、観賞用としてだけでなく、実は食用として、花や葉、根などは薬用として利用され、3000年以上の栽培の歴史があります。
河南省安陽市では殷の時代の墓葬から出土した銅製の鼎の中から、実に3000年以上前の梅が発見されています。
古代の文献によると祭祀や料理、贈答用として用いられ、梅は伝統的に「高潔」「強靱」「謙虚」を表すとされています。
日本には弥生時代(紀元前3世紀~紀元後3世紀)に朝鮮半島を経由して入ってきたとされていて、薬木としての梅は遣唐使によってもたらされたとされています。
日本国内での生産量は年間約11万トンになり、そのうちの約6割の7万トン以上が和歌山県で生産されています。2位の群馬県が5400トンなので、その生産量には圧倒的な差があります。
また、梅の木や花をシンボルとする府県や市区町があり、茨城県は梅を「県木」に、大阪府は梅を「府花」としています。中国では「市花」として南京市や武漢市、無錫市など10の都市のシンボルとなっています。

中国では女性の名前に「梅」の字を用いることがあります。
また、「梅」は姓としても用いられています。2010年時点で中国大陸における梅姓は全国に約105万人いるとされていて、主に安徽省や雲南省、浙江省、江西省、河南省に多く、全国の梅姓の7割以上がこの地域に集中しています。
梅は蘭・竹・菊とともに、草木の中の君子として「四君子」(しくんし)のひとつに挙げられ、文人画(文人が描いた画のこと)の素材として描かれています。
歳寒三友(さいかんのさんゆう)とは、日本でもおなじみの「松竹梅」のことをいい、中国の文人画で好まれる画題のひとつでもあります。
めでたいことや長寿・延年の象徴として考えられている日本の「松・竹・梅」もこの歳寒三友を起源としていますが、中国では日本と違い「清廉潔白」という文人の理想の姿を意味していました。
歳寒三友は宋代に文人画や水墨画の題材となり、元代・明代には陶磁器にも松竹梅が描かれるようになりました。日本では陶磁器の他にも漆器や染織にもよく描かれています。
例文
面对自己的理想,你绝不能望梅止渴。
疫情期间,我只好看着旅行杂志望梅止渴了。
遇到困难,只看着宗教的经典逃避现实,这只不过是望梅止渴。
深夜肚子饿了,就打开「ブライアンチャンネル」的深夜放毒视频。我用这样的方法来望梅止渴。
没女朋友的人参加偶像团体的握手会是望梅止渴吗?
類義語
画饼充饥( huà bǐng chōng jī ):絵に描いた餅で飢えをしのぐ、[喩]有名無実、空想により自らを慰める
対義語
自由自在( zì yóu zì zài ):自由で気ままである
如愿以偿( rú yuàn yǐ cháng ):願いがかなえられる、願い通りに希望を達する
【韓国語】망매지갈(望梅止渴)
中国語の「望梅止渴」( wàng méi zhǐ kě )は、韓国語では漢字をそのままハングル読みして「망매지갈」といいます。
詳しい内容については以下の記事【韓国語】망매지갈(望梅止渴)にまとめてありますので、よかったらぜひ読んでみてくださいね。
参照
イラストレーターの皆さん
この記事を作成するに当たって使用させてもらった画像のイラストレーターさんになります。
・「せいじん」さん - ネコ
・「miho」さん - パンダ
・「とまこ」さん - 吹き出し
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