【故事成語】男尊女卑( nán zūn nǚ bēi )

男尊女卑( nán zūn nǚ bēi ):あらすじ

とても愉快にしているおじいさんと出会った孔子がその理由について尋ねると、そのおじいさんは自分が人として生まれ、男として生まれ、90歳まで生きられたことだと答えたという話。

男尊女卑( nán zūn nǚ bēi ):故事

孔子が泰山(太山)を遊覧していると、郕(せい)(成とも)の都市の郊外をぶらついている「栄啓期」を見かけました。

栄啓期は粗末な皮衣に縄を帯の代わりに巻き、小琴を弾きながら歌っていました。

「どうしてそんなに愉快なのですか」と孔子は尋ねると、栄啓期はこう答えました。

「愉快である理由はたくさんある。

天は万物を生み出したが、ただ人間のみを尊いものとした。

私は人として生まれることができた、それが一つ目の理由だ。

また、人間には男と女の区別があるが、男は尊く女は卑しい、故に男は貴い。

私は男として生まれることができた、それが二つ目の理由だ。

人間は太陽や月を見ることなく幼くして亡くなる者もいるが、私は齢90である、それが三つ目の理由だ。

貧しさとは士の常であり、死とは人の終わりである。

そういう当たり前の中に生きて、死を待つ。何も心配することはないではないか。」

それを聞いて孔子は言いました。

「素晴らしい、あなたは自らを慰め労れるお方だ」

出典《列子・天瑞》

《列子・天瑞》:“男女之别,男尊女卑,故以男为贵。”

今回の故事成語である「男尊女卑」の故事は『列子』に登場します。

『列子』とは、戦国時代に「列禦寇」(れつぎょこう)により書かれたとされる道家の文献になりますが、そもそも列禦寇という人物が本当に実在したのかどうかも怪しく、また、『列子』自体も後世の者による偽書なのではないかと言われており、その真偽も定かではないようです。

さて、この『列子』からは日本語でもおなじみの故事成語がいくつか誕生しており、例えば、「朝三暮四」「杞憂」「愚公山を移す」などもこの『列子』がもとになっています。

「愚公山を移す」と「杞憂」についての故事成語は下の記事にまとめてありますので、ぜひ読んで見てくださいね。

今回の「男尊女卑」の故事ですが、中国哲学书电子化计划-《列子》-天瑞「7」に原文が載っています。

天瑞

子列子适卫,食于道,从者见百岁髑髅,攓蓬而指,顾谓弟子百丰曰:”唯予与彼知而未尝生未尝死也。此过养乎?此过欢乎? …

この故事に登場する郕(せい)(または成)は魯国の「孟氏」の領地であったと思われます。

もともと郕は、紀元前11世紀に殷王朝を倒して周王朝を建てた「武王」が弟の「叔武」に奉じた諸侯国で、場所は現在の山東省泰安市寧陽県にあったと言われていて、叔武はその郕国の初代君主でした。

その後、斉国により一旦は滅びますが、魯国の援助によって復活し、それからさらに時代が下った紀元前500年頃の春秋時代後期、ちょうど孔子が生きていた頃に郕は魯国の「孟氏」の領地となっていたと思われます。

郕は紀元前408年に斉国により再び攻められ滅ぼされてしまいました。

今回の故事で孔子が出会った「栄啓期」(紀元前571~紀元前474年)は、字を「昌伯」といい、音楽に精通していただけでなく広い見識があり、独自の思想を持っていたとされています。

政治的な志を持っていたというわけではなく、晩年は郕の郊外(野とも)で小琴を弾きながら歌っていたと言われ、96歳でこの世を去りました。

また、彼が来ていた衣は「鹿裘」( lù qiú )というもので「粗末な衣」という意味ですが、これは鹿の皮でできていて、喪服や隠士(隠者とも)が着ていたものとされています。

ちょっと深掘り

孔子の質問に対して栄啓期が答えた3つの「愉快である理由」について、まずは「人として生まれたこと」、次に「男として生まれたこと」、最後に「90歳まで生きられたこと」としていますが

この3つを「三楽」(さんらく)といい、中国語では「三乐」( sān lè )といいます。

また、唐の時代には孔子と栄啓期が問答する場面を描いた「孔子・栄啓奇(期)問答鏡」という「古鏡」(こきょう)が作られています。

詳しい内容や実物については「中国古鏡展」からどうぞ。

Ancient Mirror Gallery

上方の銘に記されているように孔子と栄啓期の問答の場面を表わす。左方の冠を被り龍頭杖をついて長袍を着た人物が孔子で、左手を伸ばして問いかけ…

また、「男尊女卑」というのは「男は尊く女は卑しい」という、女性蔑視や女性軽視の代名詞として長い間にわたって使われてきましたが、実は男尊女卑という言葉は現代のような意味ではなく

むしろ男女それぞれの特質に基づいた「調和」「男女平等」の思想から来ているとも言われています。

詳しくは下の記事にまとめてありますので、ぜひ読んで見てくださいね。

例文

有一些欧洲国家制定法律来约束男尊女卑这种思想。

他本来想调侃她,可没想到她说他说的是男尊女卑

男尊女卑真的是重视男性、轻视女性的意思吗?

在封建社会国家男尊女卑这种思想是普遍的。

男的喜欢看性感模特的写真集,这也是男尊女卑吗?

類義語

重男轻女( zhòng nán qīng nǚ ):男性を重視して女性を軽視する(封建的)思想、男尊女卑

歧视女性( qí shì nǚ xìng ):女性差別

性别歧视( xìng bié qí shì ):性差別

対義語

女尊男卑( nǚ zūn nán bēi ):女尊男卑

歧视男性( qí shì nán xìng ):男性差別

「男尊女卑」の英語や韓国語

「男尊女卑」は英語で(私の勝手な訳ですのでご注意を……)

「the domination of men over women」(男性による女性支配)

「the subjection of women」(女性支配)

「a male-dominated society」(男性支配の社会)

「male chauvinism」(男性優越主義、男性至上主義)などと言うようです。

男尊女卑から少し話がそれてしまいますが、最近では「toxic masculinity」(トキシック・マスカリニティ)という言葉もあるようです。

この「toxic masculinity」(トキシック・マスカリニティ)という聞き慣れない言葉ですが、日本語訳としては英語をそのままカタカナ読みして「トキシック・マスカリニティ」としたり「有害な男性らしさ」としていることが多いみたいです。

「toxic」の基本的な意味は「有害な、有毒な」で、「masculinity」は「男らしさ、男性の特質」という意味になります。

ちなみに「masculinity」の対義語である「女性らしさ」は「femininity」となります。

ここでの「toxic」は「心を蝕む、ストレスが溜まるような」という意味になるかと思います。

要するに「男だからって別に強くなくたっていいじゃないか!!」

「男だって別に女性みたいに長髪にしたっていいじゃないか!!」

「男だって紅(べに)ひいちゃっていいじゃないの!!」

「泣いたっていいじゃないか!!だって男の子だもん!!」

「男だって別に家ん中で毎日ゲームしてたっていいじゃないか!!」(これは社会人としてはまずいか……)

あまりにも「男のくせに」とか「男なのに」みたいなことを言われすぎて、ストレスに感じて精神を病みそうというニュアンスと考えれば分かりやすいかもしれません。

そういう「男ならこうであるべき」「男ならこうではダメだ」という考えに囚われるあまり不満が募り、結果としてそれが爆発して犯罪を犯したり自殺してしまうというケースに至ることも少なくありません。

アメリカの銃乱射事件などの容疑者もそういったことから精神を病んでしまい凶行に及んでしまったということがあるようです。

そういった自分や他人に対して結果として「有害になり得るような男らしさ」のことを「toxic masculinity」というのだと思います。

ちなみに中国語で「トキシック・マスカリニティ」は

「有毒害的男子气概」( yǒu dú hài de nán zǐ qì gài )

「有害的男性化」( yǒu hài de nán xìng huà )

「有毒害的阳刚之气」( yǒu dú hài de yáng gāng zhī qì )

などといいます。

韓国語では「유해한 남성성」(直訳すると“有害な男性性”)となるようです。

ちなみに、韓国語で「男尊女卑」は「남존여비」(ナムジョンニョビ)となります。

韓国と言えばいまだに儒教思想の影響が色濃く残っているとされていますが、私は韓国に行ったことがないので具体的に何がどういうふうに影響を与えているのかはインターネットでの情報でしか分からないので何とも言えません。

また、韓国には「암탉이 울면 집안이 망한다」「めんどりが鳴けば家が滅びる」という諺があるようで、つまり、本来は朝になれば雄鶏が鳴くはずなのに、代わりに雌鶏が鳴くようになると、それは雄鶏が怠けて雌鶏が幅をきかせるようになっているということから、最後には家が滅びることを意味しているようです。

詳しい内容などについては「第四回 雌鳥が鳴けば家が滅びる」の記事を読んでみてくださいね。

韓国の諺 雌鳥が鳴けば家が滅びる ― 韓国男女の地位|韓国語教室 アシェルランゲージスクール

『雌鳥が鳴けば家が滅びる(암탉이 울면 집안이 …

また、日本語で「めんどりが鳴けば家が滅びる」は「牝雞之晨」(ひんけいのしん)というようです。

詳しい内容は「No.978 【牝雞之晨】 ひんけいのしん」を読んで見てくださいね。

No.978 【牝雞之晨】 ひんけいのしん|今日の四字熟語・故事成語|福島みんなのNEWS – 福島ニュース 福島情報 イベント情報 企業・店舗情報 インタビュー記事

儒学のテキストで『春秋』、『詩経』、『礼記』、『書経』、『易経』を五経と言います。 『書経』の牧誓(ボクセイ)篇にあります四字熟語で【牝鶏(ヒンケイ)の晨(あした)す】と訓読みされます。

これは中国の殷王朝が滅びる直前に皇帝の妻が政治に口出しするようになったことで国が乱れてしまい、結局、周王朝(商)に天下を奪われた故事から来ているようです。

内容的には面白そうなので、もっと詳しく調べて「牝雞之晨」を記事にしたいと思います。

イラストレーターの皆さん

この記事を作成するに当たって使用させてもらった画像のイラストレーターさんになります。

「せいじん」さん - ネコ

「miho」さん - パンダ

chinese-mao

2件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントする