【故事成語】名落孙山( míng luò sūn shān)

目次
名落孙山( míng luò sūn shān):あらすじ


宋の時代、科挙の試験に自分だけ受かってしまった孫山という人が、同郷人に結果を報告する時に「私の名前は合格者名簿の一番最後にありましたが、あなたの息子さんの名前は私よりあとにあります」と言ったという話。
名落孙山( míng luò sūn shān):故事
宋の時代に孙山( sūn shān )という才子がいました。
彼は頭が良いだけでなくユーモアにあふれた男で彼の周りはいつも笑いが絶えませんでした。
ある時、彼は同郷人の息子と一緒に科挙の試験の一種である举人( jǔ rén )の試験を受けに都に向かいました。
举人とは「隋・唐・宋」の時代に地方の推薦によって科挙の試験を受ける人のことを言います。
試験が終わり放榜( fàng bǎng :合格者の名前が掲示されること)されたので見に行くと合格者の名前は成績順に発表されていました。
落ちてしまったかと思いきや、一番最後のところに「孙山」の名前がありました。
一方、一緒に受験した同郷人の息子の名前はというと、その中にはありませんでした。
その後、孙山は先に故郷へと戻ると、同郷人から自分の息子の結果がどうだったかを尋ねられ、詩を詠んでこう答えました。
「解名尽处是孙山,贤郎更在孙山外」
「合格者の名前の最後は孫山で、あなたの息子の名前はそのあとにあります」
名落孙山( míng luò sūn shān):意味
「名落孙山」は「試験に落ちる」や「落選する」という意味になります。
出典《過庭録》
《过庭录》“吴人孙山,滑稽才子也。赴举他郡,乡人托以子偕往。乡人子失意,山缀榜末,先归。乡人问其子得失,山曰:‘解名尽处是孙山,贤郎更在孙山外。”

この「名落孙山」の故事は南宋の范公偁(範公偁:fàn gōng chēng )の著である『過庭録』( guò tíng lù )が出典なっています。
『過庭録』は紹興17~18年(1147~1148年)の間に彼が自分の父親から伝え聞いたことを著したものになります。
書の名称である『過庭録』の「過庭」は、『論語』の「季氏」に書かれている「鯉趨而過庭」に由来しており、これは孔子の弟子である「陳亢」と孔子の息子の「孔鯉」(伯魚とも)の会話からきています。
陳亢は孔鯉に孔子から何か特別なことを教わったかを聞いてみたところ、孔鯉は詩と礼を学ぶように言われ
も过庭(過庭:父親から子への教え)に由来しています。
一巻百十四条からなり、内容としては主に彼の先祖である范仲淹( fàn zhòng yān )を中心にその功績や政策について書かれており、他にも宋代の著名な文化人などの逸話についても記載されているようです。
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《过庭录》一卷,宋范公偁撰。公偁仕履未详。据其所言,乃仲淹之元孙,而不言其曾祖为谁。观其称纯礼为右丞,纯粹为五侍郎,则必非纯礼、纯粹二人之后。…
彼の先祖は官吏として活躍していた人もおり、その中でも范仲淹(989~1052年)は宋の名臣として活躍していた人物のようです。
ちなみに范公偁は范仲淹の玄孫(やしゃご)にあたります。
范仲淹には官吏としての顔だけでなく文学者としての一面もあり、岳阳楼( yuè yáng lóu:岳陽楼)の再建に際して《岳阳楼记》( yuè yáng lóu jì :岳陽楼記)という散文を創作しました。
ちょっと深掘り
ここでいう解名( jiě míng )とは「合格者の名前」という意味だと思われます。
中には解名が解元( jiě yuán )となっているサイトもありますが、その場合、解元とは「挙人で最も成績が良かった者」という意味になります。
また、宋や元の時代には解元とは「读书人」に対する通称や尊称として用いられていました。
ちなみに、贤郎( xián láng )の贤( xián )は名字とかではなく「同輩かやや下の者に対しての尊称」であり、「賢郎」で「ご子息、ご令息」という意味になります。
また、郎( láng )は「若い男性」や「男子に対する呼称」の意味があります。
日本語訳では「令郎」となっていて、「ご令息、ご子息」という意味になります。
中国語で令( lìng )は「相手の家族に関する敬称」で用いることもあります。
例文
今年高考她又名落孙山了。
这次考试我名落孙山了。
考东京大学他名落孙山了。
名落孙山是考生最怕听到的成语。
我的字典里没有“名落孙山”这个词。
類義語
一败涂地( yí bài tú dì ):一敗地にまみれる、再び立ち上がれないほど完全に敗北すること
対義語
名列前茅( míng liè qián máo ):試験で優秀な成績を収めること
【韓国語】미역국을 먹다( 名落孙山 )
韓国語にも「試験に落ちる」「解雇される」という意味を表わす「미역국을 먹다」という慣用表現が存在します。
詳しくは下の記事【韓国語】「미역국을 먹다」は「わかめスープを飲む」にあらず?!にまとめてありますので、ぜひ読んでみてくださいね。
また、わかめスープを飲むということに否定的な意味を持ってしまったのには1907年(明治40年)に締結された「第3次日韓協約」により大韓帝国軍が解散したという出来事が関係しているようです。
詳しい内容については以下の記事【韓国語】「미역국을 먹다」はなぜ「解雇される」なのかにまとめてありますので、合わせて読んで見てくださいね。
日本でも試験前は「落ちる」という言葉が縁起が悪いとされていますが、そこはちょっと言い方を変えて「落とす」とした方が良いのではないかと思います。
戦国時代とかにはよく「敵の城を落とす」とか「敵陣を落とす」という言い方もあるように、自分の目標としているものを努力によって手に入れるというニュアンスもあると思うので、ものは考え次第だと思います。
試験は「落ちる」ものではなく、「落とす」もの。
不合格だったのであれば、それは単に「落とせなかった」だけの話ですから、他人事のように客観的に「落ちた」と表現するよりかは、自分のこととして主観的に「落とせなかった」としてほうが次につながりやすいのかなと思います。
イラストレーターの皆さん
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