【麻姑搔背】麻姑の爪の長さは何㎝?

麻姑搔背( má gū sāo bèi ):意味

中国語の故事成語である「麻姑搔背」( má gū sāo bèi )は、「かゆいところに手が届く」、つまり「物事が思い通りにうまくいく」「配慮が行き届いている」という意味になります。

日本語では「麻姑搔痒」(まこそうよう)という言い方もするので、知っている方も多いかもしれません。

中国語の「麻姑搔背」にはもうひとつの意味もあって、「分不相応の望み」「高望み」という意味にもなります。

これは「麻姑搔背」の故事に登場する蔡経という男が、仙女である麻姑の長い爪で自分の背中を掻いて欲しいという下心を持ってしまい、それによりムチで打たれたという話から来ています。

麻姑搔背( má gū sāo bèi ):あらすじ

後漢の桓帝の時代(146~168年)、仙女である麻姑の鳥のような爪を見た蔡経という男が、その爪で背中を掻いてくれたら気持ちいいだろうなと思ったところ、その邪な考えを見抜いた仙人の王遠によってムチで打たれたという話。

麻姑の爪の形

この「麻姑搔背」の故事は葛洪による著『神仙伝』「王遠」に出てくる話になります。

そして、仙人として王遠とともに登場するのが、年齢が18歳くらいの麻姑(まこ)という仙女になります。

彼女は特徴的な爪を持っていて、その爪についてはよく「鳥の爪のようだ」と描写されていることが多くありますが、『神仙伝』の「王遠」にはそのような表現は見当たらず、ただ「又麻姑手爪不如人爪形,・・・・・・」(また麻姑の手爪は人爪の形のごとくならず、・・・・・・)とだけ書かれており、鳥の爪のようだということについては一言も触れられていません。

そこで、いろいろと調べていくと「鳥の爪」(鳥爪)という表現は、唐の時代に道士であった杜光庭によって書かれた『墉城集仙録』に見られることが分かりました。

『墉城集仙録』とは109人の仙女について書かれていたとされる伝記集で、その「 卷四 – 麻姑 」には麻姑の爪について「 又麻姑爪如鸟爪,・・・・・・」(また麻姑の爪は鳥の爪のごとし、・・・・・・)と表現されています。

ここから、麻姑の爪は鳥の爪のようだと言われるようになったのだと思われます。

麻姑の爪の長さ

さて、先ほどの『神仙伝』や『墉城集仙録』には麻姑の爪について人の爪のようではない、鳥の爪のようだと表現されていることがわかりましたが、麻姑の爪の長さについては具体的に書かれていません。

では、麻姑の爪はいったいどれくらいの長さだったのでしょうか。

そこで、三国時代の曹操の息子であり、魏初代皇帝の曹丕が書いた志怪小説集である『列異伝』を見てみると、麻姑と蔡経の話が短いながらも載っているので、ちょっとだけ詳しくみていきたいと思います。(以下、拙訳)

■神仙麻姑降东阳蔡经家,手爪长四寸,经意曰:“此女子实好佳手,愿得以搔背。”麻姑大怒;忽见经顿地,两目流血。 [《御览》三百七十]

■神仙麻姑東陽の蔡経の家に降る、手爪長(たけ)四寸、経おもい曰く“この女子実(まこと)に好(よ)く手佳(よ)し、願わくは背掻を得む”。麻姑大いに怒り、忽ち経地に頓せられ、両目血流す。

■神仙の麻姑は東陽の蔡経の家に降り立った。彼女の手爪の長さは4寸あり、蔡経は「この娘はとても美しく手もきれいだ、その爪で背中を掻いてほしい」。これに麻姑は大いに怒り、蔡経はたちまち地面に倒されてしまい、その両目からは血が流れていました。

曹丕の『列異伝』には、麻姑の爪の長さは「四寸」と書かれていることから、国語辞典に載っている通り「1寸=約3㎝」だとすると、麻姑の爪の長さは「約12㎝」だったということになります。

ということで、麻姑の爪の長さはだいたい12㎝だったんだ、と思いたいところですが、「寸」の長さはその時代や国によって若干違う場合があるので、中国語版Wikipediaの「中国度量衡」を参考にしながらもう少し我慢して調べていきたいと思います

まず、「度量衡」という言葉ですが、これはそれぞれ「長さ」「体積」「重さ」を表します。

魏の曹丕が生きていた時代は3世紀初め頃、時代区分としては三国時代にあたりますから、三国時代の「度」がメートル法に換算されるとどれくらいになるのか見てみると、「1丈 = 242㎝」「 1尺 = 24.2㎝」「 1寸 = 2.42㎝」「 1分 = 0.242㎝」となっています。

三国時代の1寸は「2.42㎝」となっていることから、曹丕の『列異伝』に書かれている麻姑の爪の長さは「4寸=9.68㎝」、つまり約10㎝だということが分かります。

まとめ

三国時代の曹丕が書いた『列異伝』によると、麻姑の爪の長さは約10㎝だったということが分かりましたがいかがだったでしょうか。

といっても、これは小説の中での話なのであくまでも参考までに。

爪を10㎝も伸ばしていたら普通は不潔だといわれそうですが、「ギャル ロングネイル」で画像検索してみると、爪だけを見たら現代版麻姑といわんばかりのギャルの爪がたくさん出てきます。

いかにもギャルらしいキラキラとしたデコレーションが施されていますが、確かに鳥の爪のような形をしたものもあり、なんとなく蔡経のスケベ心が理解できそうなできなさそうな・・・・・・。

興味のある方はぜひ調べて見てくださいね。

参照

『神仙伝』「王遠」(維基文庫)

『墉城集仙録』「麻姑」(維基文庫)

『列異伝』「御覧三百七十」(維基文庫)

「中国度量衡」(中国語版Wikipedia)

イラストレーターの皆さん

この記事を作成するに当たって使用させてもらった画像のイラストレーターさんになります。

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