【韓国語】기우(杞憂)

기우(杞憂):あらすじ


昔、天地が崩れ落ちてしまったらどうすればいいか悩んでいた人に、そんなことはあり得ないよと教えて安心させたという話。
기우(杞憂):意味
韓国語では「杞憂」は、「杞憂」をそのままハングル読みして「기우」(キウ:杞憂)といいます。
「無用な心配、無駄な心配をする」という意味になり、また「기우」以外の言い方として「기인지우」(キインジウ:杞人之憂)や「기인우천」(キインウチョン:杞人憂天)と言うこともあり、日本語で言うところの「杞人の憂い」となりますが、単純に「기우」というのが一般的のようです。
これは中国の春秋戦国時代に存在していた「杞国」という国に住んでいた人が、天や地が崩れ落ちてしまったら自分はいったいどこに身を隠したら良いのかと悩んでいたところ
それを見たある人が、天は単に空気の集まりに過ぎないから落ちてくることはなく、また、地も土の塊の集まりで四方に満ちているから崩れてしまうことなんてあり得ないよと教えてあげたところ
その悩んでいた人はすっかり安心して気分が晴れたという故事がもとになっています。
出典《열자・천서편》【列子・天瑞篇】
《열자・천서편》:기(杞)나라의 어떤 사람이 하느리 무너지고 땅이 꺼져 자신이 몸 둘 곳이 없을까를 걱정해 먹지도 않고 잠을 자지도 않았다.

今回の故事成語である「기우」の故事は『列子』という道家の文献が出典となっています。
『列子』とは別名を『沖虚経』ということもあり、中国の戦国時代初めころの列子(紀元前450~紀元前375年)という人物の著と言われていますが、原著自体は前漢以降に失われてしまったと考えられているので、現存する『列子』は晋の時代に編纂されたものと言われています。
『列子』はのちに道教の経典のひとつとなり、唐代には『(老子)道徳経』や『荘子』『文子』とならび道教の四大経典とされました。
この『列子』からは多くの寓話や故事成語が誕生しており、日本語でもおなじみの「우공이상」(愚公山を移す)や「남존여비」(男尊女卑)、「조삼모사」(朝三暮四)などがあります。
杞憂の故事を韓国語で読んでみたい方は下にリンクを貼っておきましたので、サイト下段の方の「기(杞)나라의 어떤 사람이・・・・・・」から読めますのでどうぞ。
ただ、ちょっと探しづらいので裏技(?)として、先ほどの「기(杞)나라의 어떤 사람이・・・・・・」を一旦コピーしたら、リンク先のページで「ctrl + F」を押して「ページ内検索機能」を開いて、先ほどコピーしたものを検索欄に貼り付けると、すぐに読みたい場所に飛ぶことができます。
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ちょっと深掘り
この「杞憂」の「杞」の字ですが、韓国版Wikipedia(?)である「나무위기」の「기우」の記事によると、「杞」は「国名」であるとしていますが、他サイトや明文堂の『사자성어 대사전』(四字成語大辞典)によると、「杞」は「木の名前」となっています。
どちらが正しいのかといわれたら、結論から言って両方とも正しいです。
『現代漢語大詞典』によると、この「杞」( qǐ )は「中国の周王朝時代の諸侯国だった国名」の他にも、木名として「杞柳」(コリヤナギ)と「枸杞」(クコ)という意味があると載っています。
「杞柳」とは日本語でいうところの「コリヤナギ」のことで、中国や日本ではそのしなやかな枝を用いてカゴなどの日用品や工芸品を作るのに古くから利用されています。
実際、中国では新疆ウイグル自治区や山東省、河北省、安徽省に伝わる「柳編」(柳編み、柳細工)の伝統技術が、国家級無形文化遺産リストに登録されており
また、日本では国の「伝統的工芸品」に指定されている兵庫県の「豊岡杞柳細工」という杞柳細工が豊岡市などで生産されていて、1200年以上の歴史を持つ伝統ある工芸品になります。
もうひとつの「枸杞」(クコ)ですが、Wikipediaによるとこれは1~2mの落葉の低木で、日本全域を初めとして朝鮮半島や中国大陸、台湾に分布しています。
クコの果実や葉は食用や茶料・果実酒などに用いられ、根は漢方薬としても用いられます。
正しい飲み方かは分かりませんが、私はクコの実にお湯を注いで、さらに砂糖をたくさん入れてかなり甘くして飲むのが好きです。クコの実自体も甘いので、甘い物好きの私にとってはたまらなく美味しいです。興味のある方は是非・・・
ちょっと話がそれてしまいましたが、この「杞」とは「杞柳」(コリヤナギ)と「枸杞」(クコ)という木に名前であると書きましたが、そもそも杞国がなぜ「杞」国といわれるようになったのかについては諸説あります。
そのうちのひとつに、杞国やその周辺では昔から杞柳(コリヤナギ)の栽培が盛んであり、人々の生活と密接に結びついていたということから、杞国という名がついたという説があります。
詳しくは以下の記事にまとめてありますので、興味のある方はぜひ読んで見てくださいね。
杞憂の故事成語に登場する杞人は天地が崩れ落ちたらどうしようか悩んでいたわけですが、韓国のインターネット百科辞典である「나무의기」の「기우」の記事によると
起こる可能性は高いとは言えないとしつつも、実際にあり得るかもしれない自然現象として次のようなものを挙げています。
まず、大地が崩れるということについては「지진(地震)や「싱크홀」(シンクホール(陥没穴))の2つを挙げています。
また、天が落ちてくるということについては「초신넝 폭발」(超新星爆発:質量の大きい恒星がその一生を終える時に起こす爆発のこと)や
「운석」(隕石)、太陽の「적색거성화」(赤色巨星化)、「소행성 충돌」(小惑星の衝突)を挙げています。
現代に比べて自然現象に対する知識が乏しかった時代の人たちにすれば、大地が激しく揺れたり、雷が轟音とともに落ちたり、はたまた流星群や流れ星を見ただけでも恐怖心を覚えるのは当然のことなのかもしれません。
それはきっと都市伝説界では真しやかにささやかれている宇宙人の話や地球滅亡の話、新たな時代の幕開けの話を聞いて本当にそうなのかもしれないと思っている人となんら変わらないのかもしれませんね。
ちなみに、この杞人が本当は何について悩んでいたのかということについてちょっと詳しく書いたものを以下の記事にまとめていますので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。
「구더기 무서워서 장 못 담그다」
また、韓国語の諺で似たような意味のものに「구더기 무서워서 장 못 담그다」(ウジ虫を恐れてしょう油を仕込めない)というものがあります。
語尾が少し変わって反語的に「구더기 무서워서 장 못 담그랴」(ウジ虫を恐れてしょう油を仕込めようか)や
「구더기 무서워서 장 못 담글까」(ウジ虫を恐れてしょう油を仕込めるか)とすることもあります。
しょう油を使おうとしたらウジがうじゃうじゃわいているのを見てしまった人が「俺はもうしょう油なんて作りたくない!」と言ったのに対して戒めた言葉なのかもしれません(笑)
この諺の意味としては、「ある程度の危険があったとしてもやらなければいけないことはある」という意味になります。
「杞憂」や「取り越し苦労」とは若干ニュアンスが違うのかもしれませんが、行動する前や何かが起こる前からあれこれ考えて優柔不断になって悩んでいる姿は、どこか杞人のそれと同じようなものを感じさせます。
イラストレーターの皆さん
この記事を作成するに当たって使用させてもらった画像のイラストレーターさんになります。
・「せいじん」さん - ネコ
・「miho」さん - パンダ
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